パタゴニアといえば、フリースやダウンジャケット、アウトドア用バッグ(バックパック)をイメージする方が多いだろう。パタゴニアは単なるアウトドア用品のブランド名と思っている方もいるかもしれない。でも今回の話は、本当の「パタゴニア」を観光してきた話だ。
せっかくなので、実際のパタゴニア個人旅行の絶景写真をご紹介するとともに、パタゴニアの観光ルート計画で役に立つ 「おすすめ観光地 TOP3(個人的な感想によるランキング) 」、また天気や服装についての感想などを残しておく。
パタゴニアってどんなところ?
既にご存知の方は無視していただいて大丈夫だが、「パタゴニアってどこ?」という方のために、まずはパタゴニアの基本的な情報について載せておきたい。
本当の「パタゴニア」は南アメリカ大陸の最南地域にあり、日本から直行便の飛行機では行くことができない場所だ。チリとアルゼンチンに跨る広大な地域で、ユネスコの世界自然遺産に指定されている国立自然公園が3つ存在している。地球に残された美しい自然が見られることと 人気アウトドアブランド「パタゴニア」 の名前の由来でもあることから、人々には『アウトドアの聖地』とも呼ばれている場所だ。
僕はチリの首都サンティアゴでの用事がひと段落したあと、せっかくチリに来ているのだからこの機会にパタゴニアへ行こうという流れになった。当初はイースター島へ行ってモアイ像を見たかったのだが、サンティアゴからの観光・行楽地としては「パタゴニア」はイースター島より断然人気が高いらしく、パタゴニアを見ずしてチリを離れることは絶対あり得ないと周りから言われたのだ。パタゴニアについてアドバイスをくれたり、防寒の服装やバックパックを貸してくれた友人には、とても感謝している。
パタゴニア観光のベストシーズン
南米は日本と季節が真逆であり、僕たちがチリに滞在していた2018年の1月〜2月はいわゆる「夏」にあたる。ベストシーズンの真っ只中にパタゴニアへ行けるチャンスなど滅多にないということで、最終的に、チリ側だけではなくアルゼンチン側のパタゴニアも見て回るルートで旅行することにした。ゆっくり回れるように僕たちが確保した日数は「16日間」である。
チリに滞在中、サンティアゴとバルパライソで日本人観光客を見掛けることはなかったが、パタゴニアでは多くの日本人と出会った。ツアー観光客もいたがどちらかと言うと「バックパッカー」の割合が高かった。ペンギンツアーでは日本人率がさらに上がったので、日本人はペンギンが大好きらしい(笑)
パタゴニアの絶景ベストスポット
ここからは、写真をメインに「パタゴニア」でおすすめの場所とその理由を紹介していく。
パタゴニアは世界自然遺産に指定されている場所が広大で、壁紙にしたくなるような超絶景の写真を撮影できるスポットがたくさんある。僕が選んだ『パタゴニアで写真撮影におすすめの場所ベスト3』を発表するので、南米旅行中「あまり日数がないけどパタゴニアは外せない」という方は、どのルートで回るかを計画するための参考としてご覧いただきたい。
No.1 カラファテのペリトモレノ氷河
ペリトモレノ氷河は、湖面からの高さが 60m~70m もある大迫力の氷河だ。ここを No.1 でおすすめしたい理由だが、とにかく「写真撮影ポイントが豊富」ということ。事前に手持ちのカメラ全てをフル充電しておくことをおすすめする。
ペリトモレノ氷河への行き方は、アルゼンチンの「エル・カラファテ(El Calafate)」から往復バスチケットを購入する。午前と午後に便があり、個人的には午後に行く方が氷河が崩れ落ちる瞬間を見られる可能性が高くなり、おすすめだ。バスは直行で「ペリトモレノ氷河」の場所まで行ってくれるし、歩きやすくて綺麗な遊歩道も整備されており、少し歩けばすぐ氷河が見られる。現地での滞在時間は約3時間。ぜひ、氷河を間近に見られる距離まで歩こう。
この日は天気に恵まれ、晴れていた。歩いているときはジャケットを着ていると暑いほどだ。立ち止まって休憩しているときには少し風が冷たいと感じたが、歩いていると半袖でも大丈夫だったくらいだ。遊歩道には階段も多いのだが、これは様々な角度から氷河を見られるための工夫のようだ。コースには分岐点もあるが、案内図が要所要所にあり迷うことはなかった。
写真で遊覧船と大きさと比較すると、ペリトモレノ氷河の桁違いな大きさが際立って見える。この遊覧船はバスツアーで来ても現地で乗れる船だと思うが、もしかすると、他の氷河も見て回ることができる、『プエルト・バンデーラ』から出発してきたクルーズ船かもしれない。
なお、氷河が崩れ落ちることがあるため、遊覧船が氷河に近づき過ぎることはない。どちらかと言うと、遊歩道を歩いて見て回る方が「眼の前」に迫る大迫力の氷河を見やすい気がした。
天候に左右されず、曇りだろうが雨だろうが『絶対に眼の前で見られる』という点も、評価が高い理由だ。パタゴニアの自然は「天候次第では何も見えない」という場所が結構あるので、ペリトモレノ氷河には「観光客をガッカリさせない抜群の安定感」があると言える。
最後に、バス乗り場に戻る帰り道での景色も綺麗だったので紹介しておく。もう少し日の光が差し込んでいれば、遊歩道の向こうに広がるアルヘンティーノ湖(Lago Argentino)の色はさらに鮮やかなターコイズグリーンとなっていただろう。
帰り道でも、振り返ればいつでもペリトモレノ氷河が見られる状況だ。シャッターチャンスは行きだけでなく帰り道にもあるので、カメラのバッテリー切れには十分に気をつけよう。
No.2 チャルテンからのトレッキング
この「エル・チャルテン(El Chalten)」も、アルゼンチン側である。トレッキングコースは自然が溢れていて、山登りやハイキングが好きな人なら絶対楽しめるはず。おすすめ No.1 のカラファテからもバスで約3時間なので、パタゴニア旅行で十分な日数を確保できない場合、総合的に見れば「チリ側」より「アルゼンチン側」のパタゴニアを僕はおすすめする。
上の写真は、トーレ湖(Laguna Torre)で撮影できた1枚だ。トレッキングコース最終地点にあり、運が良ければこの湖の色がもっと青っぽく見えるらしい。この日は見事な快晴だったが、前日の天気が良くなかったこともあり、水自体が茶色く濁っていた。ただ、とても綺麗なセロ・トーレ山(Cerro Torre)と、青く輝く流氷が見られたので大満足。
なおトレッキングコースの総距離は9km。とはいえ、コースの開始ポイントまで歩く距離を入れると「往復20km」の山道を歩く計算になる。僕たちは1日で往復したが、キャンプをする人も多い。どちらにしても、最低限の食料と水だけは絶対に持っていくようにしよう。
荷物が増えるので「キャンプをする方が楽」とは言わないが、テントから出て日の出を眺められたり、トレッキングコース間の連絡コースを通ることにより見どころを効率良く回れたりのメリットがある。ただし、シャワー、ベッド、インターネットがない環境で夜の寒さに耐えられる装備が必要になる。
なお途中で1ヶ所、飲める水を汲めたポイントがあった。確か、約7km地点と後半だったが、下の写真の小さな橋があるところだ。冷たい雪解け水の流れる小川なので、すぐに分かるだろう。ただし天候によって水を汲める汲めないは変わるので、当てにし過ぎないように。
このトレッキングコースの前半には、アウトドアブランド『パタゴニア』でロゴのモチーフに使われているフィッツ・ロイ山(Monte Fitz Roy)も眺められた。本当はフィッツ・ロイをすぐ近くで眺められるロス・トレス湖(Laguna de los Tres)まで行くトレッキングコースもありそちらの方が人気なのだが、エル・チャルテンからの距離は12kmとさらに長くなる。僕たちは遠くからでも快晴の青空の下「フィッツ・ロイ」の姿を拝めたのでラッキーだ。
もしかすると気付いた人もいるかも知れないが、僕たちはトレッキングシューズではなくて、普通のランニングシューズで山道を登り切ってしまった。足首の保護には多少の問題はあったものの、天気が良くて地面が乾いていれば、トレッキングシューズでなくても大丈夫である。エル・チャルテンに何泊か滞在し、天気の様子を見ながら登山日を決めても良いだろう。
No.3 トーレス・デル・パイネ国立公園
おすすめする「パタゴニアの絶景ベストスポット」No.3 は、ようやくチリ側の紹介になる。本記事の最初に載せていた写真も、実はトーレス・デル・パイネ国立公園での『チリ国旗』とこの地区『マガジャーネス・イ・デ・ラ・アンタルティカ・チレーナ州旗』のものだ。
パタゴニアの観光地としては、この『トーレス・デル・パイネ国立公園』が1番の見所として紹介されていることも多く、『Wトレック』と『Oサーキット』の2コースのトレッキングが人気だ。また、そのためのキャンプ場は2016年10月から完全事前予約制となっている。
このキャンプ場については記事の後半でも書いている。
ただ、特徴的なのは天気が崩れやすいことと、遠くから眺めている方が楽ちんで綺麗…(笑)
これを言うと登山者やハイカーからバッシングを浴びてしまうのだが、僕たちは国立公園内の名所をバスで巡るだけの日帰りツアーに参加した。個人的には十分におすすめできる内容で、曇天だったがパタゴニアのアイドル「グアナコ」たちも出迎えてくれた。
動物はグアナコの他に、絶滅危惧種に指定されている「南アンデス鹿(ゲマルジカとも)」を目撃することもできた。間近で見られるのは珍しいらしいが、正直日本人としては鹿を見てもそこまで興奮できなかった。あとこちらは余談だが、プエルト・ナタレスの宿泊先で出会ったポーランド人の夫婦は「体長2mのピューマを間近で見た!」と写真を見せてくれた。狩りをした直後らしくかなり生々しかったが、ツアーガイドの男性は「南アンデス鹿との遭遇確率はピューマより格段に低いんですよ!」と強く言っていたし、案外ピューマは見られるようだ。
参考:トーレス・デル・パイネ国立公園の動物たち – Google 検索(英語)
日帰りツアーのハイライトは、他にも色々あった。天気には恵まれなかったので写真はあまり撮れなかったが、それでも「サルト・グランデ大滝」ではターコイズグリーンの雪解け水が『激流』となって流れていく様子を眼の前で見られたし、昼食後には少し晴れ間も見えてきて主役の「パイネ山群」もようやく顔を覗かせてくれた。
バスツアーで1番楽しみにしていた『パイネ山群』は、ツアー前半〜中盤に掛けては厚い霧と雲でほとんど隠れてしまっていたのだ。昼食タイムには雨まで降ってきて、こりゃあダメだと半分諦めていたところ、最後にトロ湖(Lago del Toro)から見えた。もし天気が良ければ、この日帰りツアーはパタゴニアで最高の1日になっていた可能性もあった。なぜなら、様々なタイプのパタゴニアの景色を、ツアーガイド付きのバスで効率良く回れたからだ。
下の写真を見ると、パイネ山群の周辺にだけ、非常に分厚い雲が掛かっている様子が分かる。これがツアー中盤に雨を降らせていた理由だったのか、と納得。国立公園内には洪水のせいで数日間立ち入り禁止(封鎖状態)になっていた場所もあったので、何とかツアーに参加できただけでも良かった。ズーム写真を撮りながら、自然の雄大さに浸るのもまた良し(笑)
こちらはさらにズームして撮った写真だ。この悪天候の中、1年以上前に予約したキャンプへ向かうため、バックパックで重い荷物を背負ってトレッキング中の人たちもいる。山の天気は気まぐれで数時間後には晴れているかも知れないけど、気の毒に思わずにはいられなかった。
なお、日帰りツアーでは最後に「ミロドンの洞窟」にも立ち寄るルートになっている。洞窟と実物大のミロドン像があるだけらしく、僕たちはわざわざ入場料を払ってまで中に行く必要はないと判断した。入り口付近にあった展示物や紹介動画だけでも十分楽しめたのと、お土産を見たりしているうちに、約20分で他の観光客たちも戻ってきた。もし日帰りのバスツアーに申し込むなら、他のツアー会社では最初にミロドンの洞窟に立ち寄ることもあるらしいので、肝心の『トーレス・デル・パイネ国立公園』でカメラの電池が切れないように注意しよう。
パタゴニアを最大限に楽しむには?
僕たちは山登りやトレッキングが大好きというタイプではないが、逆に、そういう立場からのアドバイスとして「パタゴニアを最大限に楽しむには」どうすれば良いかを考察しておく。
1. 服装は旅のスタイルに合わせる
パタゴニアのベストシーズンである「夏」に日本から出発をする場合は、なるべく動きやすい冬服を来て出発しよう。天気が良く日差しが強い日には、半袖で良いくらいの気温にもなる。荷物が重くならないように、必要最低限の防寒具で旅をするのがベストな選択だ。
逆に、僕たちのように「夏から夏へ移動する」タイプの旅人の場合は、パタゴニアでは夏でもそれなりに寒くなることを覚えておこう。防寒にも風よけにも使える「ダウンジャケット」は1つは持っておきたい。ネックウォーマーや手袋もあると便利だ。
また、キャンプをするかしないかによっても準備すべき服装は変わる。キャンプをしないのであれば、そこまで本気で防寒対策をする必要はないだろう。
僕は正直おすすめしないが、チリの『プンタ・アレーナス』かアルゼンチンの『ウシュアイア』まで行って「野生ペンギン鑑賞ツアー」に参加したい場合、もう少しきっちりと防寒対策をしておいた方が良い。僕たちはマグダレナ島のマゼランペンギンを見に行ったが、風も強くかなり寒かった。
2. キャンプ場の予約は早めに済ます
僕たちは、チリでもアルゼンチンでも一度もキャンプをしていない。ただ、もしパタゴニアの大自然の中でキャンプをしたいのであれば、チリの「トーレス・デル・パイネ国立公園」では事前予約が必須であり、半年前とかに予約が埋まってしまう程らしいので注意しよう。
参考:How to Book Campsites in Torres del Paine
ちなみに、今回おすすめしたアルゼンチンの「エル・カラファテ」と「エル・チャルテン」、チリ「トーレス・デル・パイネ国立公園」へ最寄りの町「プエルト・ナタレス」では、人気のホテルはどんどん予約できなくなっていった。僕たちが使っていたのは 世界最大の宿泊予約サイト、Booking.com だが、3日~7日前くらいまで無料キャンセルできるところもあるので、良さそうな宿をとりあえず予約しておく方が良いかもしれない。
3. 飛行機とバスを上手く組み合わせる
パタゴニアはとにかく広大だ。なので、都市間の移動には当然のように時間もお金も掛かる。そこで飛行機とバスを上手く組み合わせたルートを考える必要が出てくる。
飛行機よりもバスを使った方が経済的なのは間違いないし、電波は弱くてもWiFiが使えたりUSB充電器があったりしてバスでも十分快適な旅が可能なのだが、結局は飛行機のチケットをどう予約するかが大事だ。南米大陸を一周するようなルートであれば片道チケットも可能で、同じ場所に戻らなくて良い『周遊・オープンジョー』のルートを組めればベストだ。
周遊チケットとは「複数の都市を巡回するように予約された航空券」のこと、そして、オープンジョーとは周遊チケットの中でも「ある飛行機での目的地と次の飛行機での出発地が異なる場合」を指す。つまり、都市間の移動はバスや電車など別の交通手段を使うことになる。
本記事中でおすすめとして紹介した『カラファテ』『チャルテン』『プエルト・ナタレス』はいずれもルートに組み入れやすいので、パタゴニアへ行くならぜひ訪れて欲しいと思う。
パタゴニア紀行のまとめ
今回はパタゴニアで僕がおすすめしたい「ベスト絶景スポット」3箇所と、その理由についてご紹介してきた。やはり、パタゴニアといえば『氷河』は必ず見ておきたいところだ。将来はもしかすると見られなくなっている可能性もある。
将来的に見られなくなっている可能性があるのは「野生のペンギン鑑賞ツアー」も同じだが、ルートを組みづらい場所にあることと、実際に行ってみた感想から、今回はおすすめとしては紹介しないことにした。代わりに『チャルテンからのトレッキング』、日帰りバスツアーで『トーレス・デル・パイネ国立公園』を見て回る方が、個人的にはずっとおすすめだ。
とはいえ、パタゴニアは日本からとても遠く「そう簡単に何度も行ける場所ではない」ので、どうせ行くなら後悔のないように楽しんで欲しい。そして、この記事が参考になったら幸いである。僕たちも、生きているうちにもう1度くらいはパタゴニアへ行けたら良いな。では!