嵐山は観光名所で人通りが多いイメージがあるかもしれないが、僕としてはサイクリングをするのにもおすすめしたい場所だ。観光シーズンに京都を車で旅行する くらいなら、綺麗な紅葉を眺めながらカラッとした青空の下を自転車で走る方が絶対に良い。
今回は、地元民の僕がおすすめの嵐山・北嵯峨のサイクリングコースについてお伝えする。サイクリングは半日もあれば十分楽しめるので、2泊3日の京都観光旅行なんかでも気軽に日程の中に入れられる。嵐山には徒歩で行くと時間の掛かる穴場がたくさんあるので、もし京都・嵐山のことを知り尽くしたいなら、ぜひ参考にしてみて欲しい。
JR 嵯峨嵐山駅からサイクリング開始
サイクリングコースの場所は、歴史的風土特別保存地区にも指定されている京都・北嵯峨。開始地点の JR 嵯峨嵐山駅は、京都駅から快速で 13 分というアクセスの良さだ。京都は街中のサイクリングも楽しいが、やはり昔ながらの風景が残る「自然いっぱい」のサイクリングコースは格別! それでは早速、そのコースとポイントを地図と写真付きで紹介しよう。
1. 嵐山の混雑や渋滞を避け、自転車で北嵯峨へ
JR嵯峨嵐山駅(トロッコ嵯峨駅)のレンタサイクル で自転車を借りたら、嵐山方面へと向かう多くの観光客たちに背を向け、早速、北嵯峨方面へと向かう。詳細は Google マップの大きな地図で確認して欲しいのだが、まずは以下のポイントを目指す。清涼寺に立ち寄るという選択肢もある。最短距離で行けば 10 分で自然豊かな風景が広がってくるはず。なお、コースには緩やかな坂が含まれる。暑い夏には電動自転車を選ぶと良いだろう。
これは北嵯峨高校の周辺に広がる田園風景だ。奥に見えているのは、標高 924 m の愛宕山。愛宕さんの愛称で親しまれている愛宕山は、京都市内から北西の位置に見える大きな大きなランドマークでもあり、地元の中学生にとっては、秋の愛宕登山競走がある恐怖の対象でもあったりする。でも、毎年 7 月 31 日の夜には「千日参り」で信仰深く愛宕山を参拝する。
ちなみに、この撮影ポイントのある道路は「一条通り」である。ご存知の通り、京都の街は碁盤の目になっていて、北から南へ「一条」「二条」「三条」「四条」という風に、今でも多くの道路がその名を残している。この道は市街から西へかなり外れており、碁盤の目状になっているわけでもないのだが、こんなところにまで平安京の名残りがあるのが面白い。
なお余談ではあるが、宿泊費を抑えて週末のアクティビティを楽しみたいという人は、この近くにある宇多野ユースホステルを利用するという方法もある。宇多野ユースホステルからなら、北嵯峨のサイクリングコースへ通じる「一条通り」へとすぐアクセスできるからだ。上の写真は、宇多野ユースホステルから西へと向かうところである。
2. 北嵯峨の歴史的風土特別保存地区
北嵯峨の歴史的風土特別保存地区は、昔ながらの田園風景が広がる場所だ。今では京都でもこういう場所がめっきり少なくなってしまった。サイクリングコースの説明だが、先ほどの北嵯峨高校前のポイントから「一条通り」を少し東へ走ったところにあたる。秋の季節だけではなく、春、夏、冬に訪れても良い。松尾芭蕉さながらに季の句でも詠みたくなる。
3. 月見の名所・広沢池のほとり
北嵯峨のサイクリングコースは、まだ始まったばかり! 先ほどの歴史的風土特別保存地区から、さらに東へ走り続けると左手に「広沢池(ひろさわのいけ)」が見えてくる。ここは今も昔も地元の子供たちの遊び場であり、ザリガニ釣り、モロコ釣り、どんぐり拾いなど、自然遊びのたくさん残る場所。池の南側にはボート乗り場もある。
日本三沢としても選ばれている広沢池はサイクリングコースの休憩に最適だ。地元の子供と会話をしてみても良いし、路上で旬の果物(秋は柿!)や野菜を売る人たちもいる。観光客で大混雑している嵐山とは違い、京都・嵯峨野ののどかな雰囲気が楽しめるだろう。また、広沢池は大文字の送り火の時に「鳥居形」と「灯籠流し」が見られることでも有名だ。
このサイクリングコースは、ふと立ち止まって休憩したくなるポイントが所々に存在する。本当にどの季節に来ても楽しませてくれるし、昔から変わらない風景は心に安らぎを与えてくれる気がする。上の撮影ポイントは、広沢池のほとりを北へ少し上ったところである。
4. 平安時代の面影が楽しめる京都平安郷
サイクリングコースとしては広沢池のほとりを北へ上っていくのだが、春と秋に期間限定で公開される京都平安郷 という施設へ立ち寄るのもオススメだ。2015 年の秋は、今週末の 11 月 21 日 (土) ~ 23日 (月) に公開され、ミニコンサート、いけばな体験など催し物もある。ここは入場料は無料なのが嬉しく、入り口は広沢池の南側を自転車で通過しきったところの左側にある。駐輪場も用意されているため、サイクリング途中でも気軽に立ち寄れる。
5. 京野菜の自動販売機コインロッカー!?
こちらは、コインロッカーを改造した野菜自動販売機。旬の京野菜・万願寺とうがらしも、格安の 100 円で購入できてしまう優れもの。この販売機の下の方には「野菜専用」と大きく謳われているが、お米や糠、果物など様々なものが売られている。このサイクリングコースを十分に楽しむためには、ぜひ 100 円玉を多めに用意して出発しよう。コインロッカーから取り出した野菜や果物を「丸かじり」して水分補給をする。面白いじゃないか!
この変わった京野菜の自動販売機の場所は、広沢池のほとりから北へ、緩やかな坂を登ったところにある「後宇多天皇陵」のさらに少し先。左手の民家の軒先にあり、とても目立っているため、この道を走っている限り見落とすことはないはずだ。
ところで、後宇多天皇陵の脇道にある竹林では、有名な嵐山・嵯峨野の竹林と比べると人が少なく、ひっそりとした雰囲気がある。11 月後半、紅葉が色付けば、竹林とのコントラストが綺麗な写真が取れる絶好のポイントになりそうだ。こちらも、サイクリングの途中にぜひ立ち寄ってみたい。
6. 穴場スポットの直指庵も自転車なら楽々
次のポイント直指庵は「想い出草ノート」や「隠れた紅葉の名所」として知られる浄土宗のお寺。嵐山の観光コースとして紹介されることもあるが、嵐山を中心とした徒歩や人力車での観光コースでは回りきれない場合がほとんどであり、結果的に穴場となっている場所だ。しかし自転車であれば、ここまでも楽々これてしまう(電動自転車ならもっと楽!)。
このサイクリングコースを僕自身が楽しんだ今年 11 月の上旬、残念ながらまだ紅葉シーズンではなかったため、紅葉の写真をご紹介することはできない(もし写真を提供してくださる親切な方がおられましたら、当ブログの問い合わせ画面 からご連絡お願いします)。
なお、直指庵はこのサイクリングコースの中では「唯一」の寺院である。場所は少し分かりにくい所にあるので、しっかりと Google マップをチェックしておこう。遠方からお越しの「自転車で穴場の京都観光がしたい」という人にとっては、最重要なポイント。
7. 嵯峨天皇陵の参道中腹からの眺め
サイクリングコースの途中、嵯峨天皇陵の参道を最後まで登ってみたので、合わせて紹介をしておきたい。嵯峨天皇陵の参道にある石段はとても綺麗に整備されており、しかも途中は京都市内の素晴らしい眺めが見晴らせる。このサイクリングコースで通過してきた広沢池、北嵯峨の歴史的風土特別保存地区、時代劇の撮影でもお馴染みの大覚寺と大沢池、遠くには京都タワーまで肉眼でハッキリと見ることができる。空気も澄んでいて、まるでハイキングをしているかのような気分になれるだろう。
実はこの嵯峨天皇陵の参道、2013 年 9 月に大きな土砂崩れがあった。あの、嵐山の渡月橋で大きな氾濫を引き起こした「台風 18 号」による被害だ。しかし、今ではすっかり綺麗な参道へと生まれ変わっている。
この参道、最後まで登りきると神聖な雰囲気の白い鳥居を拝むことができる。サイクリングコースの距離は約 6 km とかなり初心者向けのため、この嵯峨天皇陵を最後まで登ることで、ようやく「ちょうど良い運動」になる。観光客はほとんどいないため、秋の紅葉をゆっくりと楽しみたい人にもオススメだ。
今回のまとめ
今回、僕たちが回った北嵯峨のサイクリングコースは以上である。所要時間は 2 時間ほどであったため、時間的にも体力的にも、まだまだ他に見て回れるコース設定だ。秋の特別公開をしている紅葉が綺麗な寺院など、自転車ならハシゴしながら見て回る余裕がある。おまけスポットと言うには贅沢な場所がいっぱいで、何度サイクリングしても飽きないのが特徴。
例えば、大覚寺、清涼寺、宝筐院などは JR 嵯峨嵐山駅にも近く回りやすい。ただし、このエリアは混雑も予想される。自転車に乗ることで迷惑が掛かりそうな場合は、歩道へ降りて自転車を押して歩くといった、周りへの配慮も忘れないで欲しい。海外からの観光客や地元のお年寄りなどもいるので、ぜひ安全運転でお願いします。