結納品の意味に「感激」の涙。日本に、結納があって良かった!

結納で「結ぶ」家族の絆

この記事に辿り着いた読者のうち、どれほどの人が「結納品の意味」を知っているだろう? 結納は日本の伝統行事でありながら、昨今では「略式結納」や「同時交換結納」などと、現代社会のニーズに合わせられた「モダン結納」が増えてきているそうだ。

何を隠そう、少し前まで「結納」について何も知らなかったのは僕自身。今回は、そんな僕が2ヶ月の期間かけて準備してきた「国際結婚に向けたオリジナル結納」の話である。国際結婚するカップルに限らず、多くの人に参考にしていただければ幸いだ。

国際結婚で結納をするいきさつ

僕の婚約者のオリアンはフランス人だ。今年、交際1年半の末にプロポーズをし、婚約指輪を渡した。僕のロマンチックなプロポーズ はオリアン本人がブログでも書いている通りで、僕たちは既に、海外のバリ島で共同生活をしていた。

お互い両親とも会っており、実家に泊まったり一緒に旅行をしたりする間柄だ。だが、日本とフランスで遠く離れて住む「両親同士」はまだ会ったことがなかった。そこで僕たちは2人で話し合い、日本の伝統行事でもある「結納」を執り行なおうと決めた。

6人中4人が海を超え「京都」で結納

僕たちにとって、単なる「顔合わせ」ではなく「結納」を選ぶことは必然的だった。これは、一生に一回のチャンス。それに、僕たち自身はバリ島から京都へと飛び、オリアンのご両親もフランスから京都へと飛ばなければならない。そうとなれば、結納をするべきだ。ただ食事をして顔合わせをするだけでは済ませられない。

ところが、日本人の僕でさえ、結納についての知識はあやふやなものだった。まずは、結納をする意義や、結納品1つ1つの意味などを詳しく調べる必要があった。また「結納の日には良い晴れ着を着たい」という思いから、地元京都で着物を借りられる場所も念入りに調べた。

結納について調べてみてはじめて分かったこと

結納とは、まず男性側が「女性側の家」へ訪問するのが基本で、大きく分けると「関東式」と「関西式」さらには「九州式」の3つがあると分かった。さらに調べると「最近は顔合わせで済ませる人の方が多く、結納をする人の場合も略式結納が主流である」とのことだった。

このように、結納について調べてみると、一言に「結納」とは言っても「地域や人それぞれにやり方が少しずつ違う」ということが分かる。国境を越えて「国際結納」をする自分たちは、女性側の両親をはるばる海外から招いているという時点で、既にユニークだった。

正式でも略式でもない自分たちのオリジナル結納

結納品は 「関東式」 「関西式」 「九州式」 全てを取り入れれば、バリエーションはとても豊富になる。もし 「正式」 「略式」 の 「結納の形式」 にこだわりがなければ、結納品それぞれの意味を自分で受け止め、オリジナルの結納品を選ぶのもありだろうと考えた。

当然だが、僕は男性側から女性側に贈るだけの「結納返しのない形式」を提案した。そして、お互いにフランス語と日本語で書いた家族書を準備し、結納品には、寿留女(するめ)、寿栄広(すえひろ)、子生婦(こんぶ)、友白髪(ともしらが)、結美和(ゆびわ) を選んだ。

寿留女(するめ)

素晴らしい女性に贈られる「寿留女(するめ)」には、噛めば噛むほど味が出るという「円満な家庭を願う思い」も込められている。

寿栄広(すえひろ)

いつも世界を飛び回って「幸せで開けた人生を送りたい」と願う2人にピッタリだったのが「寿栄広(すえひろ)」だ。どうか、末広がりでもっと世界が広がる人生を送れますように。

子生婦(こんぶ)

生命力が強くて、繁栄していく家族を願った「子生婦(こんぶ)」は、喜ぶ(よろこぶ)という言葉も掛かっており、日本の縁起物の代表格である。フランスでは珍しいのもあり即採用。

友白髪(ともしらが)

「友白髪(ともしらが)」は、夫婦がいつまでも一緒に強い絆で結ばれますように、そして共に白髪になるまで仲睦まじく過ごせますように、という 「2つの素敵な願い」 が掛かっている。

結美和(ゆびわ)

プロポーズの際も登場した婚約指輪。ここでは「結美和(ゆびわ)」という、結納品ならではの「縁起の良い字」があてられている。

結納のハレ姿「振袖のお着物」で写真撮影

衣装協力:京都嵐山・紅姫
結納会場:京都嵐山・花のいえ

しきたりに従うための結納でなく家族のための結納という形

結納の当日、僕の両親とオリアンのご両親は、長い時を経てようやくの初対面となった。僕の父親が起立して日本語で挨拶をすると、それを僕が英語に通訳し、オリアンもフランス語へと通訳する。それは厳かな雰囲気でありながら、同時に3人が喋るという楽しい空間だった。

次にお互いの家族書を交換した。僕の家族書はフランス語、オリアンの家族書は日本語で書かれている。当然「オリジナルな結納」なので、家族書は「単なる家族構成」ではない。これもあった方が良いなと感じた「家族の背景」や「それぞれの職業」なども記述しておいた。

結納品の意味をとても丁寧に説明する母

いよいよ、僕がオリアンの家側に「結納品」を差し出すときがきた。もしこれが日本人同士の結納ならば、1つずつ「結納品の意味」を説明する必要などないだろう。しかし国際結婚での結納の場合、まず「縁起物に願を掛けるという日本の風習」から説明していく。

ここでは母が「結納品の意味」をとても丁寧に説明をしてくれた。僕は英語に通訳し、それをオリアンがフランス語に通訳する。オリアンのご両親は「結納品の美しさと1つ1つの意味」に感銘を受けられ、お母様は「感激」をして涙を流される場面もあった。

結納品の意味に「感激」の涙。日本に、結納があって良かった!

あとがき

僕たちのような「オリジナル結納」について、読者がどう考えるかは様々だと思う。しかし、ニーズが多様化する現代社会においては、そう珍しくなくなってきているのかもしれない。

僕たち家族にとっては、この結納は「結婚するということ」を考える機会にもなった。特に、僕自身 「結納品の意味を調べる過程」 で多くを学んだ気がする。どうやら 「結婚に願う幸せな生活」 というのは、今も昔もそう違わないもののようだ。

自分自身で結納品を選び、1つ1つの「結納品の意味」をより深く心に留められた僕は、むしろとても幸運だったとさえ感じる。結納をするかしないかで悩んでいる人がいたら、この記事も参考にして、ぜひ自分たちなりの 「結納の形」 を見つけて貰えれば嬉しいなと思う。