京都観光で地元民が 「それ反対」 と思う3つの観光パターン

僕は京都の 嵯峨野 で生まれ育ったため、小さい頃には良く渡月橋の下で泳いで遊んでいたものだ。それから、自転車で田んぼ道を通りぬけながら 広沢池 まで行き、どんぐり拾いをしたりスルメを糸でぶら下げてザリガニ釣りをしたりもした。僕が思い浮かべる京都とは、このようにのんびりした時間が流れる自然の豊かな場所だった

幸いにも、京都は規制で 嵐山・北嵯峨を「歴史的風土特別保存地区」に指定している。思い出のままの京都の風景が綺麗に残っていて、京都への帰郷時にサイクリングをするのは僕の楽しみの1つ だ。世界的に有名な京都の観光名所をせかせかと移動するより、その方が京都に帰ってきたと実感できる。地元民ならではの、普通の観光客とは違う視点である。

今回はそんな地元民の僕が、京都観光で地元民が「それ反対」と思う3つの観光パターンをご紹介する。京都が大好きで何度も訪れている方々なら大丈夫かと思うが、はじめて京都を訪れるタイプの方々が京都観光で失敗しないよう、シェアしていただけたら幸いだ

京都の歴史と観光案内事情

前置きとして、少しだけ京都の歴史と観光業界について述べておく。京都観光においては、地元民だからといってすぐに観光ガイドが出来るほど易しいものではない。だが、京都では国内だけでなく海外からの観光客も急増 し、観光業界では様々な問題が起きている。

僕は「京都観光案内のプロ」とまではないが、京都の地元民として29年という長い月日、近代京都の移り変わりを見てきた。京都市の第1号 Airbnb ホスト として、30組以上の海外観光客を接客した経験もあり、寺社仏閣についてはもちろん、文化体験ができる施設、ホテルや旅館、お食事処に甘味処などはマップでの位置関係を把握している。バス路線図と主要なバス停名、電車の路線図と乗り換え駅、碁盤の目での通り名と順番など、交通手段をその場その場で正しく判断できる基礎知識もある。英語での説明も幾度となくしてきた。

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ただし、京都で観光案内をするために求められる知識は「京都御苑の参道の様に」幅広い。平安時代から戦国時代に関する背景知識、仏教や神道に関する知識、方位学や中国唐文化に関する知識など、知れば知るほどに奥が深くなるのだ。

参考:歴史的には794年に日本の首都に定められた都城・平安京

京都の観光案内には幅広い知識が必要

京都観光で地元民が感じる不思議

ここで、地元民の代表として「京都まで来といて何て勿体ない…」と不思議にすら感じる「京都観光でそれだけは反対!」と思う3つの観光パターンを挙げる。それぞれの反対する理由についても詳しく述べているので、京都好きの方々にも共感して貰えたら幸いだ。

1. 観光シーズンの京都を自家用車やレンタカーで回る

京都観光において「地元民が最も反対する」のがコレだ。特に春の観光シーズン、秋の観光シーズンは自家用車やレンタカーを使ってはいけない。僕は地元民なので、桜のシーズンも紅葉のシーズンも可能な限り自転車を使っていた。折角なので、僕の体験談を話そう。

京都の地元民は自転車が大好き

僕は自転車で出掛ける時、三条通りを西から東へ向かうことが多かった。観光シーズンには、この三条通りの「嵐山方面への車の大渋滞」がどこまで続くのか興味を持って見ていたものだ。全く動けず止まったままの自動車の縦列は、何と天神川通りを越えて三条口の近くまで続いていたことさえある。最もひどい時は、地元の交通ルールを知らない観光客の車が線路を塞いでしまい、嵐電(路面電車の愛称) までもが動けなくなっていた。

次に、大学生時代のある秋の日、僕が「宝筐院 の紅葉」を見たくて自転車で出掛けた時の体験を話そう。この日、僕が自転車で通り抜けた宝筐院までの道中(嵯峨釈迦堂 へと続く一方通行の道)は「たくさんの地方ナンバーの車」で溢れかえっており、完全ストップした状態だった。車中を覗いてみると沈黙の険悪なムードが漂うカップルばかりで、その次に、子供を乗せた家族連れが多かった。僕は、その中でも一際目立っていた赤いスポーツカーで「喧嘩中のカップル」を自然と覚えていたのだが、何と僕が宝筐院の綺麗な紅葉をじっくり見終えて帰る頃、そのカップルの車はまだ嵯峨釈迦堂前の渋滞の中だったのだ。

京都を車で観光することは観光シーズンは避けよう

先日、これらのことを個人タクシーの運転手に話すと「最近は観光客のマナーもちょっとは向上してきてマシになってきてるよ」と仰っていた。近頃は状況が改善しているらしい。

ただ、観光シーズンの京都観光で自家用車やレンタカーを選択するとロクなことはない。

JR、阪急、京阪、地下鉄、嵐電、叡電、京都市バス、タクシー、レンタル自転車などを上手に使って、基本は徒歩で見て回ることを地元民の僕はおすすめする。

嵐山・北嵯峨サイクリングコース - 京都・嵐山の穴場スポットを巡ろう

2. 金閣寺と清水寺のみを観光し京都駅がお土産の館

はじめて京都を観光する人に対して、この観光パターンを「それ絶対にあり得ない!」とは言いにくいかもしれない。なぜなら、このパターンは週末の土日2日や3連休の2泊3日で京都の主要観光地を見て回るためのモデルコースとされているからだ。

しかし、僕はこのような「人と同じことだけをする観光のパターン」に対して、やはり反対せざるを得ない。地元民たちは「京都の魅力はもっと他にある」と感じているはずであり、大量の観光客が同じ場所に押し掛けることは渋滞や混雑の原因ともなってしまう。

一度は行ってみたい金閣寺(鹿苑寺)

例えば、はじめての京都観光で 金閣寺 に行きたいと思うところまではまあ良いとしよう。でも次に向かう場所が清水寺では、京都について多くを知れる「絶好の機会」を自ら逃しているようなもの。もし金閣寺へ行くのなら、事前に「金閣寺の持つ歴史的背景」を記憶から呼び覚ましてみよう。個人的に、ほとんどの日本人にとっては『足利将軍家の衰退の歴史を追いかける京都観光』なんてコースの方がテーマがあって面白いだろうと思う。

具体的には、先に「初代将軍・足利尊氏 の天竜寺」を訪れておき、本命「三代将軍・足利義満 の金閣寺」の後、応仁の乱の最中に隠居した「八代将軍・足利義政 の銀閣寺」へ行く。余裕があれば「大本山である相国寺」を訪れるのも良いだろう。地元民の僕としては「闇雲に有名な観光地だけを訪れる京都観光」より、こういう「日本文化や歴史について記憶が残りやすい京都観光」をおすすめしたいのだ。

正直、ローカル誌や京都観光の情報誌では、新装オープンのホテル、お洒落なレストラン、流行りのお土産物などばかりが紹介されていてがっかりするときがある。個人的な経験では「新しいお店の場所」や「流行りのお土産物」など、観光客にはちょっとしたオマケ程度のものとしてしか映っていない。ただ、新旧の魅力が融合しているのが京都の特徴でもある。

地元民には意外?京都駅ビルの建築構造は海外観光客に人気

そう言えば、京都駅ビルの設計をした 原広司 は世界的に有名な建築家だ。少し意外かも知れないけど、外国人観光客の間では京都駅ビル自体が「1つの観光スポット」でもある。

僕自身、Airbnb ゲストたち に繰り返し質問をされるまであまり気に留めていなかった。実際、京都駅ビルが「いつ、誰に、どのようにして」設計されたかを知る人は、地元民でも稀かもしれない。しかし今、僕は思う。京都駅は、決して単なる「お土産の館」ではない。東京駅がそうであるように、京都駅も「1つの観光スポット」として注目しよう。地元民が京都駅ビルに愛着を持っているように、京都駅に対する見方も変わるはずだ。

参考- Wikipedia より抜粋:京都駅ビル(JR西日本)は、日本の鉄道駅舎としては異例の国際指名コンペ方式で行われ、新駅ビル設計者には原広司、安藤忠雄、池原義郎、黒川紀章、ジェームス・スターリング、ベルナール・チュミ、ペーター・ブスマンの7名の複数の建築家が指名された。設計審査の結果、先ず原広司案、安藤案、スターリング案の3案に絞り込まれ、さらなる協議を経て「原広司案」が最終案として採用された

3. スターバックスなど外資系のチェーン店に入る

京都四条烏丸スターバックス

このことは京都観光に来たことのある人なら、地元民でなくてもご存知の方が多いだろう。京都には 景観規制のための特別条例 がある。そのため、ローソンなどのコンビニエンスストアに始まり、大手の居酒屋チェーンからドラッグストア、さらには、外資系チェーンのマクドナルドやスターバックスでさえ、特別に「京都らしい外観の店舗」を構えている。

そして、地元民が反対する観光パターン3つ目がコレだ。京都らしい外観の見慣れた店舗が目に入ると、折角の京都観光でチェーン店に入ってしまう観光客。しかし、京都観光をするなら「地元のお店」を利用して欲しいのは当然のこと。京都のリピーターの方々も、地元が京都のお店を優遇する方が「京都を満喫する」ことに繋がると知っている。

例えば、湯豆腐と湯葉料理で店舗展開してきた人気上昇中の「」、昭和二十七年創業の「京都・小川珈琲」は地元民の僕もおすすめしたい。また、黒毛和牛一頭買いで知られる「ミートショップ・ヒロの焼肉処」、寛政二年創業・福寿園「伊右衛門サロン京都」のように、京都発で京都に複数店舗を構えるお店であれば、まずハズレがない。

京都観光を地元民のように楽しみたいのであれば、四条烏丸の界隈から散歩し、自分自身でお気に入りのお店を見つけるのも悪くない。この辺りには地元民もおすすめの良いホテルが数多くあり、綺麗な碁盤の目状の通りが特徴的な京都の街では、例えば2泊3日の旅行中、ホテルと駅との往復で「毎日別のルートを通る」といったことが可能だからだ。北から南に下って、六角通り、錦小路通り、仏光寺通りなどで、東西に入ル。帰り道でも同じように、東から西へ行く場合なら、花見小路通り、先斗町通り、麩屋町通りなどで、上ルか下ル。

これは一例に過ぎないが、もし京都観光をするなら、四条通りや河原町通りといった大通りばかりを使わず、ぜひとも「細い路地」にも足を延ばして欲しいもの。京都とは縁の小さい「外資系チェーン」の利用はなるべく避け、少しでも多く地元のお店を利用して欲しい。

あとがき

地元民が反対する3つの京都観光パターンを、もう一度おさらいしよう。

僕は思う。現存する京都観光のモデルコースは「とりあえず有名観光地を回り、京都の地元限定のお土産を買わせる」という某ツアー会社のパッケージツアーの「成れの果て」だと。

そんな観光パターンを参考にし、かつあまり計画も立てずに京都へ来てしまうと、自家用車(もしくはレンタカー)で渋滞に巻き込まれたり、大混雑する観光名所にがっかりしたり、気が付けば大通り沿いの外資系チェーン店ばかり入っていたりする。このような京都観光はとても勿体なく、特に、車で観光するパターンは悪循環から他の2つにもハマりやすい。

そうだ、京都へ行こう。のスローガンではじめて京都を観光をされる方々、ぜひご参考に。